フーテン・プロモーション/2011.01.30/神奈川・ラゾーナ川崎・プラザソル①

フーテン・プロモーション/2011.01.30/神奈川・ラゾーナ川崎・プラザソル①

◎第1試合　ホワイト森山復帰戦　30分1本勝負
　○小野武志(13分48秒　タコ絡み)ホワイト森山●
★前日に送られて来たフーテン・メルマガを見て驚いた。復帰戦の森山選手が,その復帰戦で引退するという。
とても寂しいが,今の時代,プロレスだけで食うのはインディーのレスラーにとっては厳しい状況。一人の男としての決断...寂しいけど,仕方の無い事。だから最後の試合で燃え尽きて欲しい...。
思い返せば森山選手のデビュー戦は今でも鮮明に覚えている。 2003年4月20日ディファ有明で行われたKAIENTAI DOJOの旗揚げ一周年興行。
セコンドに囲まれ森山選手は入場し,真霜選手とイデオロギーをぶつけ合うような雰囲気の中試合が始まり, バシバシ蹴りを入れ,腕ひしぎ十字固めであっという間に森山選手が勝利した。
http://www.geocities.jp/masamahoroba/ka/k-dojo/030420/kaientai030420002.htm#042003
だが,試合の印象よりも試合後の会場の“無かった事にしよう”みたいな雰囲気が印象深い。
今大会にはデビュー戦の相手である真霜選手も参戦していたし,森山選手を何度目かの欠場に追い込んだハヤト選手も参戦していた。頓挫してしまったがホワイト家族が何気に揃っていたのも運命なのだろう。
そしてデビュー戦と引退試合を目に出来た事も,俺にとっては運命なのだと思う。
復帰＆引退という珍しい形での引退試合の相手は“無敵”小野選手。復帰戦で勝てる程,甘い相手では無い。
だからこそ粉骨砕身,文字通り身を削り骨を砕くような気持ちでのぞまなければ勝つどころか,爪痕すら残せない。
試合では小野選手の容赦無い攻撃が森山選手を襲う。引退試合だからと言って相手に花を持たせたり,手加減なんてしない...だって,ここは誇り高きバチバチのリングだから。愛情を持ってボコボコにし最上級の送り出しをした小野選手は素的だった。
最近では引退試合だから相手に花を持たせたり,なんやかんやってのが多いが,やはり引退する人間に残る負けるようじゃいけない。
アントニオ猪木さんの引退試合は試合より試合後の方が印象が深い。ドン・フライ選手からコブラツイストで勝った事より,「道」の方が印象深い。
そんな猪木さんのかつてのライバルであったマサ斉藤選手の引退試合は,現役バリバリのスコット・ノートン選手が相手。セミリタイア状態の斉藤さんが,ノートン選手にボロボロにされての引退試合...引退試合はこうでなくちゃって感じの厳しい試合だった。だから,凄く印象に残っている。
話はそれたがボコボコにされ,プロレスの厳しさを最後の最後に叩き込まれる森山選手の引退試合は凄く印象に残るものになるだろう。
だが森山選手もボコボコにされっ放しって訳でも無かった。元々実力のある選手だけに,序盤なんか良い場面も沢山あった。
だが,気持ちが入りすぎて場外からリング内の小野選手にかけ続けたアキレス腱固めが仇となった。ブレイクがかかり技を解いた瞬間場外に墜落...「ドスン」と物凄い衝撃音が会場に響いた。
リングに戻った森山選手だが,明らかにそこから失速した感は否めなかった。けど,それも森山選手らしいっちゃらしかったのかも。
終盤は気力だけで闘うような印象だった。ガッチリと極まったオヌゥ固めを必死でエスケープし,蹴りを凌ぎテキサス・クローバー・ホールドをかけた。ドラゴン・スクリューもドラゴン・スープレックスもハイキックも炸裂させた。何度倒されても何度も何度も立ち上がった。
同志の大場選手からの「最後だろ!!」というゲキ,観客からの声援...森山選手は本当に何度も何度も立ち上がった。だが,それで勝てるような小野選手ではなかった。
最後は小野選手のタコ絡みという最上級の技で森山選手のプロレスラー人生は幕を降ろした。
全てが終わってリングで倒れてる森山選手...鼻は腫れがあり,白い肌に血が流れていた。
試合後は小野選手と抱擁し,総合引退試合に続きプロレス引退試合も裁いた野口レフェリーとも抱擁し,四方に礼をして森山選手はリングを降りた。
引退試合だったが紙テープも飛ばないし,花束の贈呈も無いし,本人のマイクも無かった。引退試合だったが,それを知らない人も沢山いた。復帰戦という形で森山選手の引退試合はひっそりと行われていった。それもまた森山選手らしかったのだろう。
怪我も多く大変なプロレス道だっただろうが,本当に御疲れ様でした。
業界的には無名な選手だったかもしれないが,バチバチファンの記憶にしっかり残るようなファイトを続けた森山選手。
この日,川崎には少しだけ雪が降った。気付かない人も多かった程の短く少しの雪,すぐに消えてしまった雪。だが,そんな雪だからこそ美しく印象に残る。
まるでこの日の雪のような森山選手のプロレス人生だった.....。