みちのく2004年12月3日⑥

みちのくプロレス/2004.12.3/東京･後楽園ホール⑥

第6試合　フジタ"Ｊｒ"ハヤト･デビュー戦　30分1本勝負
●フジタ"Ｊｒ"ハヤト(7分31秒　逆エビ固め)中嶋勝彦[健介OFFICE]○
★18歳で現役高校生の"フジタ"選手と,16歳の東北タッグ王者"中嶋"選手の10代の二人がメイン。試合内容的には若手を先輩が叩き潰すっていうような試合。ただそこにお互いの短いながらも生きていた証が投影され感動する試合に。
まずは中嶋選手が入場。メインでシングルで相手がデビュー戦という難しい状況ながらも落ち付いた表情を見せる。やはり修羅場を潜り抜けてきた自信なのだろうか。そしてフジタ選手が入場。ラガにノリながら客席を煽り入場。新人らしからぬ風貌と謙虚さのない入場に好感度は持てないものの。デビュー戦で後楽園のメインやら何やらのプレッシャーを考えればしょうがないかな。リングにそろう10代のニ選手は対照的な光を放つ。黒髪でいかにも優等生のような中嶋選手...少年独特の"爽やか"さが漂う。一方金髪＆眉剃りでワルガキいや今時の糞ガキといった風貌ののフジタ選手...少年独特の世の中を知らないけど何かに反抗したいといった"背伸び"の雰囲気が漂う。両者ともイイ表情だ。そして,運命のゴングが鳴らされた。フジタ選手がいきなりタックルを仕掛ける。少々焦ったかズバリ決めるというより無理矢理押し込むと言った感じで中嶋選手をコーナーでテイクダウンさせる。マウントを取り張り手を叩き込むと腕ひしぎ逆十字へ。しかし,プロレスにはロープブレイクがある。なかなか放さず会場のヒートを買う。中嶋選手立ちあがり一息つくとプロの先例を浴びせていく。ミドルキック。サッカーボールキック。踏み付け。とエグイ打撃にフジタ選手の体が折れ曲がる。しかし,心は折れない。攻撃されながらも目は中嶋選手を睨み付ける。エルボーや張り手合戦でも体の違いがある為ぶっ飛ばされる。それでも立ちあがるフジタ選手の頑張りに静観していた俺も思わず声援させられてしまう。デビュー戦で満員の観衆から声援を引き出した10代の熱い戦い。その後ドロップキックや逆エビを凌ぎドラゴンスクリューで反撃をこころみるフジタ選手。しかし体が動かないのか次の動きに入れない。なんとか必殺(反則)技の"ＫＩＤ(フロント"チョーク")"をかけるも中嶋選手の余裕は奪えない。これがプロの世界だと言わんばかりに容赦無い打撃を打ち込んでいく中嶋選手。受けていたフジタ選手の体が受けではなく逃げていく。頭では受けようと思っても体が拒否する...18歳でデビュー戦でメインで怖くないと言ったら嘘になるだろう。きっと怖かったはず。終盤逆エビで搾られるもなんとかエスケープ。会場の声援が凄い。再度中央でガッチリ極められると耐えきれずタップアウト。新生みちプロのメインイベントが終わった。内容的にはメインとしては満足できるものではなかった。だがそれでも試合として成立させた中嶋選手の素晴らしさと,何も出来ないながらも精一杯を見せたフジタ選手。10代の二人が見せた戦いは内容では判断できないものとなった。
試合後リングに残ったフジタ選手。立ちあがると拍手がおこる。リングを降り両親と抱き合い涙し,四方を廻り深深と礼をする...その時18歳の少年の清々しさを感じた。正直感動した。が,同じ内容は2度と通用しない。頑張りキャラで行けるほどプロの世界は甘くないし,頑張りキャラなら他の団体に任せればいい。みちプロで戦うからには次は"何か"をプラスして来てもらわないと...新崎社長がメインでデビューさせた意味を考えるなら。そして神に守られているだけじゃないという事を実感して欲しい...いやしたか。デビュー戦でメインに出るフジタ選手に嫉妬しないレスラーはいないだろう(しなかったら終わりだ)。そんな先輩達がリングを囲み応援してくれた。観客も何も出来ない新人に金を払い応援した。中嶋選手に佐々木健介選手というプロレスの父がいるならば。フジタ選手には新崎人生選手というプロレスの父がいる。新崎選手の心配そうな顔は本当の父親のような表情だった。そして体が不自由ながら立派に育ててくれた偉大な両親がいる。ドッグレッグスの仲間もいる。フジタ選手は一人じゃない...リング上は一人で戦っていても。それをデビュー戦で感じたはずだ。今日無事にメインで試合をした事をこれから素晴らしいプロレスで返していってもらいたい。